5年使うと言ったNikon Zfを、売った。
※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます
僕は前の記事で、こう書いた。「5年使う」という距離感で、Nikon Zfを選んだ、と。
その約束を、僕は破った。Nikon Zfを手放し、Nikon ZRに買い替えた。
この記事は、その約束を破った理由と、乗り換えて失うもの、得るものを、包み隠さず書いた記録だ。2026年7月時点の話として読んでほしい。
Zen Gadgetではこれまで、「買う前に、手放すときを考える」と何度も書いてきた。カメラや家電を選ぶとき、5年後、10年後に自分がどう使っているかを想像してから買う。それを読者に勧めてきた張本人の僕が、5年経たずにNikon Zfを売った。今回はその矛盾を隠さず、なぜそうなったのかを書く。
なぜ、5年の約束を破ったのか
理由は2つある。娘の成長と、動画への欲求だ。
一つ目は娘のこと。表情や動き方が、先月と今月で違って見える時期になった。写真で一瞬を切り取るだけでは、その変化のスピード感を残しきれないと感じるようになった。
二つ目は仕事のこと。自分の事業やクライアントワークで、動画をもっと撮りたいと思うようになった。写真機としてのZfを構えながら、動画の場面だけiPhoneに持ち替える運用が、だんだん煩わしくなっていた。
Nikon Zfの動画は、あくまで写真機のついでの性能だ。4K UHD 60p、N-Log記録には対応しているが、RAWでの内部収録はできない。本気で動画を撮りたいと思ったとき、Zfは正直、物足りなかった。
Nikon ZRという選択、630gという数字の符合
Nikon ZRは2025年10月24日に発売された。発売時の想定価格は29万9,000円前後だったが、2026年7月時点の実売はそこから下がって、25万円前後で推移している。
ZRを選んだ理由は、軽さと動画性能の両方が、Zfを上回っていたからだ。
数字を並べると、面白い符合がある。
| 項目 | 重さ |
|---|---|
| Nikon Zf 本体のみ | 630g |
| Nikon Zf 実使用(バッテリー込み) | 710g |
| Nikon ZR 実使用(バッテリー・カード込み) | 630g |
ZRの実使用重量630gは、Zfの本体だけの重さと同じ数字だ。バッテリーとカードを入れて構えた状態のZRが、Zfの裸の重さに並んでいる。持ってみると、その差は数字以上にはっきり分かる。
マウントはどちらもNikon Zマウントで、レンズはそのまま引き継げる。Zfに乗せていた40mm f/2 SEは、ZRでも変わらず使える。レンズ資産を手放さずにボディだけ乗り換えられたことは、決断のハードルを下げてくれた。
Nikon ZRの動画性能は、Nikon Zfと何が違うのか
動画に関しては、次元が違う。
| 項目 | Nikon Zf | Nikon ZR |
|---|---|---|
| 動画解像度(最大) | 4K UHD 60p | 6K 59.94p |
| RAW動画内部収録 | 非対応 | 対応(12bit・N-RAW/R3D NE/ProRes RAW HQ) |
| カラー処理 | N-Log | N-Log |
| メカシャッター | 搭載 | 非搭載 |
Zfの動画は4K UHD 60p、N-Log記録止まりで、RAWでの内部収録はできない。ZRは6K 59.94p、12bit RAWの内部収録に対応する。フォーマットはN-RAW、R3D NE、ProRes RAW HQの3種類だ。
R3D NEはRED社のコーデックをニコン向けに調整したもので、ニコン公式によれば、REDと同じ色空間・Logを採用し、REDのカメラと同等のカラーマッチが得られるという。
ダイナミックレンジは15段以上、デュアルベースISOは800と6400の2点を持つ。ファンレス設計で、動作音を気にせず内蔵マイクで収録できる。音声は32bit float形式で内部収録できる。
Zfの動画が「写真機のついでの動画」だったとすれば、ZRの動画は「シネマカメラ水準」だ。この差が、僕が乗り換えを決めた一番の理由だった。
背中を押したのは、マップカメラの下取りだった
買い替えを決める最後の一押しになったのは、マップカメラの下取りだった。
新品のZRを購入するのと同時にZfを下取りに出すと、買取査定額が最大20%前後アップするキャンペーンをやっていることを知った。ただしこれは常時開催されている制度ではない。時期や対象機種によって、上乗せ幅は10%から20%の間で変動する。買い替えのタイミングでたまたまこの条件に当たったのは、正直、運がよかった。
Zen Gadgetでは、買う前に手放すときを考えることを、繰り返し書いてきた。カメラの買い替え時期についても、売り時と買い時を分けて考えるべきだと書いた。今回のZf→ZRの乗り換えは、その考え方を自分で実践した形になる。下取りで値がつく道具は、買う判断も、手放す判断も、軽くなる。
手放して失うもの、メカシャッターの感触
隠さず書く。ZRに乗り換えて、失うものもある。
一番大きいのは、メカシャッターだ。ZRにはメカシャッターが搭載されていない。以前の記事で、僕はZfのシャッター音を「カシャッ」という機械音だと書いた。金属ダイヤルのクリック感、頂部の真鍮が使い込むほど角から地肌を見せる感触。あの、触っているだけで気持ちいいという感覚は、ZRでは得られない。
写真を撮る楽しみそのものも、これまでより薄れるかもしれない。Zfはダイヤルを回し、シャッターを切るという所作そのものが、撮る時間を豊かにしてくれる機材だった。ZRはその方向のカメラではない。
これは覚悟の上での乗り換えだ。だからこそ、ここに書き残しておく。
それでも僕が得たいもの
写真を撮る楽しみが失われるとしても、それは記録を残すエネルギーに変換して、たくさん使っていくつもりだ。
娘の変化を、写真の一瞬だけでなく、動く姿と声で残せる。仕事の現場を、素材として残せる。動画という形で残せるものが増えるなら、失うものと引き換えにする価値はあると、今は思っている。
約束を破ったことに、言い訳をするつもりはない。5年使うつもりで買ったZfを、1年足らずで手放した。それでも、その時々で自分と家族にとって一番いい選択をする、というのがZen Gadgetの本当の哲学のはずだ。約束を守ることより、今の自分に正直でいることを、今回は選んだ。
ZRがどんなカメラか気になる人は、下のリンクから見てほしい。価格は変動するので、詳しくは商品ページで確認を。
よくある質問
Nikon ZfとNikon ZRでレンズは使い回せますか
使える。両方ともNikon Zマウントの機種で、レンズは共通だ。40mm f/2 SEのようなZfで使っていたレンズは、ZRでもそのまま装着できる。ボディを乗り換えても、レンズ資産を手放す必要はない。
マップカメラの下取りは必ず20%増えますか
いいえ。常時開催されている制度ではなく、新品購入と同時の下取り交換・先取交換を対象にした期間限定のキャンペーンだ。上乗せ幅は時期や対象機種によって10%から20%の間で変動する。「必ず20%増える」という前提で計画を立てず、購入前にマップカメラの公式情報で最新の条件を確認してほしい。
Nikon ZRにメカシャッターはついていますか
ついていない。Nikon ZRはメカシャッターを搭載していない機種だ。Nikon Zfのような金属ダイヤルの操作感やシャッター音の質感を求める人には、この点は乗り換え前に知っておいてほしい。
Nikon ZRの動画性能はNikon Zfとどれくらい違いますか
大きく違う。Zfは4K UHD 60p・N-Log記録までで、RAWの内部収録はできない。ZRは6K 59.94p、12bit RAWの内部収録(N-RAW/R3D NE/ProRes RAW HQ)に対応し、ダイナミックレンジ15段以上、デュアルベースISO800/6400、ファンレス設計、32bit float音声内部収録という、シネマカメラに近い仕様を持つ。
今回の乗り換えで後悔はありませんか
いまのところ、ない。メカシャッターの感触や、ダイヤルを回して撮る所作は確かに手放した。それでも、娘の姿を動く記録として残せることのほうが、今の僕には重い。撮る楽しみを味わうより、残す量を増やすほうを選んだ、というだけの話だ。半年後、一年後に気持ちが変わったら、それもまた正直に書く。
価格・仕様は2026年7月時点のNikon公式情報に基づく。マップカメラの下取りキャンペーンは時期により内容が変わる。