Nikon Zf レビュー

はこだて自由市場で、干物が並ぶ台の前に立った。Nikon Zf に40mm f/2 SEをつけて、腰の高さから1枚切った——冒頭の写真だ。値札が少し読める、ニシンの青みがシャドウに残る、発泡スチロールの白が飛びすぎていない。わたくしが Zf に求めていたのは、この日常の質感をそのまま残す距離感だった。
Zfは、わたくしが「カメラで買うな」をやめたカメラだ。
Sony α7 を手放して、Nikon Zf に来た理由
Zen Gadgetで記事を書くとき、わたくしは「買うな」を最初に考える。
去年まで、わたくしはSony α7IIIを使っていた。AFは速い。動画も強い。レンズも豊富。スペック表で並べれば、今もα7シリーズを選ぶ理由は山ほどある。
だが——持ち出さなくなった。
妻と1歳半の娘と出かける日曜日、カバンの重さが嫌になる。α7と24-70mm f/2.8で約1.4kg。ベビーカーを押しながらこれを首から下げると、肩が痛い。気づけば、iPhoneだけで撮って帰る日が増えていた。
持ち出せないカメラは、ただの減価償却する文鎮だ。
Nikonは長年敬遠していた。「ニコンおじさん」——公園で望遠を構えるシニア層のネットミーム。一部の信者がSNSで「やっぱりNikonだよね」と言うのを見るたびに、あの世界には近づくまいと思っていた。
それが、北海道出張のカメラ選びで崩れた。
40mm f/2 SE を選んだ、それだけの理由
店頭でZfを触ったとき、わたくしは40mm f/2 SEキットに手を伸ばした。
このレンズだけがZfのクラシカルなデザインと完全に合う。Z 24-70 f/4 もZ 35mm f/1.8Sもつけてみたが、ボディの顔つきと合わない。SEレンズは、Zfのために設計されている。
スペック:
- 重量 約170g(パンケーキに近い)
- 最短撮影距離 0.29m(テーブルフォトが成立する)
- 40mm(35mmより寄れて、50mmより広い)
- F2(室内でも使える)
ボディと合わせて約760g。α7+24-70f2.8の約半分。これなら毎日持てる——そう思って買った。
Nikon Zf 40mm f/2 SE レンズキット(¥358,500・カメラのキタムラ)
はこだて自由市場の干物台で、Nikonの色がわかった
冒頭の一枚に戻る。
この写真は、現像せず JPEG撮って出しで Instagram にそのまま上げた。編集ゼロ。それでも干物のグラデーション、発泡スチロールの白、値札の赤——記憶の中にある市場の空気と、ほぼ同じ色で残った。
Nikonの色は、Sonyのように正確ではない。Canonのように美肌に寄せてもいない。Fujifilmのフィルムシミュレーションほど個性的でもない。
強いて言えば「記憶色」だ。撮った瞬間に見ていた感情が、そのまま残る。
- 空の青が、記憶にある青に近い
- 肌が、自然な血色
- 木々の緑が、濃すぎず薄すぎず
- 夕暮れのオレンジが、懐かしい
画像編集に時間をかけたくない人間にとって、これは月に何時間もの時間の節約になる。これは数値化できない価値だ。
許せない欠点も、正直に書いておく
嘘はつかない。Zfには毎日イラッとする欠点がある。
SnapBridgeは2世代古い
Nikon公式の転送アプリ「SnapBridge」。出張から帰ってきた日、30枚ほどiPhoneに送ろうとして、3回アプリを再起動した。
- Bluetoothで常時接続しているはずなのに、Wi-Fi切替の瞬間に見失う
- 「原本サイズ」と「2MP」の切替が毎回リセットされる
- 接続確立まで平均20秒
Sonyの「Creators' App」、Canonの「Camera Connect」と比べて、明確に2〜3世代遅れている。これは設計思想の古さで、ファームウェア更新では直らない種類の遅れだ。
PC転送にはNX Studioが便利だが重い
USB-CケーブルでMacに繋げばFinderで吸える。だがNikon純正の「NX Studio」を入れると色の管理が楽になる——と言いつつ、このソフトがMacでRosetta経由で動く重さだ。M4 Macでもフォルダ読み込みに数秒の引っかかりがある。
解決策はあって、Lightroom ClassicのNikonプロファイルで読み込めばNX Studio は不要になる。ただしこれを試行錯誤するのに、わたくしは3時間使った。
40mm SEのフード問題
別売の純正フード HN-40 を装着しているが、これが外れやすい。ジーンズのポケットに入れて出し入れすると、いつの間にか緩んでいる。わたくしは黒のマスキングテープで軽く固定して運用している。
スペック以上に、所有している感触
Zfは、触っているだけで気持ちいいカメラだ。
- 金属ダイヤル3つ(ISO/シャッター速度/絞り)のクリック感
- 頂部の真鍮が、使い込むほど角から地肌が見える
- シャッター音が、α7系のミラーレス電子音より明確に「機械音」
これは数値化できない。動画を撮らない、SNS運用しない、写真を撮ること自体が目的の人間のための設計だ。
iPhoneのカメラは、2年で買い替える。Zfは10年使える前提で作られている。10年買い替えない道具は、時間の節約になる。¥358,500を10年で割れば、月¥2,988。スタバのフラペチーノ5回分。そう考えると、安い。
わたくしの判定
写真が好きで、今のカメラが重くて持ち出せていない子育て世代 → 買う
妻と子供がいて、日常の記録を残したい。重さと大きさの両方を半分にしたい。Nikonの色で暮らしの空気感を残したい——この3つが重なる人にとって、Zf + 40mm SEは2026年時点で最も合理的な選択だ。¥358,500は安くはないが、10年使える投資と考えれば、¥2,988/月で済む。
条件: 写真が好きで、今のカメラが重くて持ち出せていない子育て世代。日常の質感を残したい人。
理由: Zf + 40mm SE は約760g(α7+24-70 f/2.8の半分)。10年使う前提なら ¥358,500 は月¥2,988相当。Nikonの「記憶色」が編集時間も削る。
すでにSony α7系やCanon Rを使っていて不満がない人 → 待つ
AFも、動画も、レンズの選択肢も、現状のシステムで完結している人間にとって、Zfへの乗り換えはシステムコストが重すぎる。マウント変更で手持ちレンズ資産がゼロになる。後継機の動向を1〜2年見てから判断するほうが合理的。中古のZfが¥200,000台に落ちてくるのは、2027年後半の見込み。
条件: すでに Sony α7系や Canon R を使っていて、AF・動画・レンズで不満がない人。
理由: マウント変更で手持ちレンズ資産がゼロに。後継機の動向を1〜2年見てから判断する方が合理的。中古Zfが¥200,000台に落ちるのは2027年後半の見込み。
AF速度最優先・動画メインの人 / 初めてのカメラとしてこの価格を検討する人 → 買うな
運動会・鳥・スポーツのような過酷な被写体追従を求めるなら、Sony α7 Vのほうが明確に速い。動画メインなら Panasonic S5II や Sony α7S III のほうがシステムとして優位。そしてこの価格帯を初めてのカメラとして選ぶのも違う。Zfはセカンド・ボディもしくは「30代以降で写真に時間を投じる覚悟がある人間」のための機材だ。運転免許を取った日にポルシェを買うような無理がある。最初の1台なら、Nikon Z50II(¥140,000前後)か、Fujifilm X-T50(¥220,000前後)で「カメラを持って出かける」生活を半年試すほうがいい。
条件: AF速度最優先・動画メインの人 / 初めてのカメラとしてこの価格を検討する人。
理由: 過酷な被写体追従なら Sony α7 V のほうが速い。動画メインなら Panasonic S5II / Sony α7S III が優位。最初の1台なら Nikon Z50II(¥140,000前後)か Fujifilm X-T50(¥220,000前後)で半年試すほうが先。
本記事の価格・スペックは2026年4月時点のNikon Japan公式情報(nikon-image.com)およびカメラのキタムラ実売価格に基づく。冒頭および本文中の写真の一部は、わたくしが実際にNikon Zf + 40mm f/2 SEで撮影したもの(2025年・はこだて自由市場ほか)。SnapBridgeの挙動はiOS 18 / Ghostアプリ v3.6 時点の環境での観測。ファームウェア更新により改善される可能性がある。