DJI Mavic 4 Pro、¥27.7万は「空からの絵」が仕事になる人のもの。
「空から撮った娘の運動会の俯瞰が、あると良いですよね」——先月、実家近くの公園で娘を遊ばせていたら、見知らぬ年配の男性がMavic 3 Proらしき機体を手に持って、そう話しかけてきた。「でも飛ばす場所がなくて、結局持ち歩いてるだけです」。彼は少し寂しそうに笑って、機体をバッグに戻した。
¥27万払って、飛ばせない。——これが日本でドローンを買う人の、かなりの確率で行き着く現実だ。
DJI Mavic 4 Proの話をする前に、この一行を先に書いておきたい。
ドローンは、便利な道具だ。
ただし「便利」と「自分に必要」は、同じ意味ではない。
DJIが2025年5月に発売した Mavic 4 Pro を、本日2026年4月時点の公式情報だけで冷静に見る。1億画素のHasselbladメインカメラ、360°回転するインフィニティジンバル、4/3型CMOSセンサー、最大51分の飛行、O4+映像伝送。日本価格は ¥277,200 から。
スペックを並べれば、Mavicシリーズ史上最強のフラッグシップだ。ただし、娘の運動会を撮るために¥27.7万のドローンを買う必要は、どこにもない。
問いはいつも同じ。自分は、これで何を撮るのか。
公式スペック(DJI公式確認済み)
| 項目 | Mavic 3 Pro | Mavic 4 Pro |
|---|---|---|
| メインカメラ | 4/3型 CMOS / 20MP | 4/3型 CMOS / 1億画素 |
| 中望遠 | 1/1.3型 / 48MP / 70mm | 1/1.3型 / 48MP / 70mm(据え置き) |
| 望遠 | 1/1.3型 / 12MP / 166mm | 1/1.5型 / 50MP / 168mm |
| ダイナミックレンジ | 12.8ストップ | 16ストップ |
| ジンバル可動範囲 | 上方35° | 上方70°(インフィニティ) |
| 最大飛行時間 | 43分 | 51分 |
| 映像伝送 | O3+ / 15km | O4+ / 30km |
| 内部ストレージ | 8GB | 64GB |
| 機体重量 | 958g | 約1,063g |
| 障害物回避 | 全方向 | 全方向(LiDAR追加) |
(出典: DJI公式スペックページ dji.com/jp/mavic-4-pro/specs、2026年4月19日時点)
価格は Mavic 4 Pro(DJI RC 2付属)¥277,200 / Fly More Combo(DJI RC 2)¥348,700 / Creator Combo(DJI RC 2 Pro)¥418,000 。
1億画素Hasselbladという数字の意味
最初に数字の読み方を合わせておきたい。
Mavic 3 Proのメインカメラは2,000万画素だった。Mavic 4 Proはこれが1億画素になった。画素数は5倍 。
ただし「画素数5倍 = 画質5倍」ではない。センサーサイズは4/3型のまま、同じ面積に5倍の画素を詰めた形になる。1画素あたりの受光面積は小さくなる。つまり暗所性能は画素数だけで上がるわけではない。
では1億画素は何に効くか。トリミング耐性 だ。
撮影後に一部を切り出して拡大しても、解像度が保たれる。広告素材、不動産の俯瞰、映像制作での「後で寄りを作る」作業——これらの用途では、1億画素は確実に効く。
家族の思い出、旅の記録、SNSへのアップロード。これらの用途では、1億画素は1ピクセルも活きない。 YouTubeにアップした瞬間に4K/30pに落ちる。Instagramなら1,080px幅に落ちる。
画素数は「素材として切り刻む人」のための数字だ。完成品を出す人には関係がない。
1億画素を活用する具体的な職能は、広告・不動産・映像制作・測量・建築撮影。ここに当てはまる仕事をしていないなら、この数字は自分のための数字ではない。
360°ジンバルは、誰に効くか
Mavic 4 Proで最も象徴的な機能が、上方70°まで回る「インフィニティジンバル」だ。
従来のドローンは、カメラが下向きか水平までしか動かなかった。見上げるアングルで撮るには、機体ごと傾ける必要があった。 機体を傾けると、プロペラが映り込むか、前進しながらしか撮れない。
Mavic 4 Proは違う。機体は水平のまま、カメラだけが上を向く。ビルの下から見上げる構図、橋桁の裏、鉄塔の真下から上、滝の裏側——「地上カメラでも難しい角度」を、ホバリングしたまま撮れる 。
これは映像表現の幅を明確に広げる機能だ。ただし、広がった幅を使わなければ、機能としてはゼロと同じになる。
自問してほしい。直近1年で、上方アングルで撮りたくて諦めたシーンはあったか。
ゼロなら、この機能のために¥27.7万を払う理由はない。
51分飛行とO4+伝送——業務機の文脈
51分の飛行時間は、Mavic 3 Proの43分から8分伸びた。O4+映像伝送は30kmに到達した(日本国内の法規制下で実効距離はこれより短い)。
この数字は、家族の記録を撮る人間のための数字ではない。業務で1フライトの往復時間・撮影時間・予備時間を計算する人 のための数字だ。
51分フライトがあれば、離陸→遠方までの往復→現地での構図確認→本番撮影→戻り——これを1回のバッテリーで完結できる。40分台のドローンだと、遠方現場では2バッテリー必要になる。バッテリー交換の10分間で光が変わる、風が変わる、太陽が雲に入る。業務の現場では、この10分が成果物の品質を決める。
つまり51分は「51分飛ばす機能」ではなく、「現場で焦らない機能」だ。
一方、家族の運動会の撮影なら、飛行時間は10分もあれば足りる。そもそも公園や学校の敷地内で私用ドローンを飛ばせるケース自体が、日本ではかなり限定的だ。
ドローン規制の現実(2022年改正航空法以降)
ここは冷静に書く。
日本でドローンを飛ばすには、2022年6月の航空法改正以降、以下が必要になる。
登録義務(100g以上)
- 国土交通省への機体登録(登録記号を機体に表示)
- リモートID機能の搭載
飛行禁止・許可申請が必要なケース
- 空港周辺・150m以上の上空
- 人口集中地区(DID地区)の上空
- 人や物件から30m未満
- 祭り・イベント等、人の集まる催し上空
- 夜間飛行
- 目視外飛行
都市部はほぼ全域がDID地区に該当する。つまり 東京23区・大阪・横浜・名古屋等の都市部では、許可なしでは飛ばせない。 飛行させる場合、国土交通省への個別許可申請(オンラインで「DIPS 2.0」経由)が必要になる。
¥27.7万のドローンを買って、家の近所で飛ばせない、という人は多い。
Mavic 4 Proは1,063gあるため、もちろん登録義務機だ。私的な河川敷、郊外の許可済みフィールド、地方の広大な私有地——飛ばせる場所は事前に確保しておく必要がある。
「買ってから考える」では詰む。場所の目処が立ってから買う、が正解の順番だ。
所有すると出てくる、小さな摩擦3つ
Mavic 4 Proは所有していないが、Mavic 2系の知人運用と、Mini 3 Proを触った経験から、この系列のドローンで必ず出る摩擦を3つ。
一つ目。バッテリーの自然放電と保管モード 。DJIの知能バッテリーは、10日ほど使わないと自動で50%台まで放電する。撮影直前に「フル充電で出かけよう」と思っても、前日に充電しておかないと出られない。——Creator Combo 3本体制でも、ローテーションを忘れて現場でバッテリー3本中2本が保管モード、という話は海外フォーラムで頻出する。
二つ目。プロペラの輸送ダメージ 。機体をリュックに押し込むと、プロペラの付け根に微妙な曲がりが蓄積する。最初のフライトでは気づかないが、3ヶ月後に「ホバリング時に小さく振動する」症状として出てくる。予備プロペラ(4枚)は¥3,500前後。消耗品として最初から2セット買う前提。
三つ目。DIPS 2.0の飛行計画申請が想像以上に面倒 。2022年航空法改正以降、人口集中地区・150m以上・夜間・催し物上空の飛行は、個別申請が必要になる。申請は「DIPS 2.0」のウェブフォームで、1件あたり30分〜1時間。修正指示が来ることもある。海外フォーラムには「Mavic 4 Proのために週末2日つぶした」という日本ユーザーの投稿が複数ある。
これらは購入前に織り込まないと、¥27.7万が戸棚で埃を被る。
買うかレンタルか——Maprental / GooPassという選択肢
ここが本記事の核心になる。
Mavic 4 Proの¥27.7万は、確かに決して気軽な金額ではない。ただし「この機体が自分の仕事に合うか」を見極めるための選択肢は、所有だけではない。
Maprental と GooPass では、DJIドローンのレンタルが可能だ。Mavicシリーズは定常的にラインナップに入っている(Mavic 4 Proの取り扱いは2026年以降順次拡大予定)。
想定されるレンタル料金の相場感:
| 期間 | 想定費用 |
|---|---|
| 1泊2日 | 約 ¥8,000〜¥12,000 |
| 1週間 | 約 ¥25,000〜¥35,000 |
| 1ヶ月 | 約 ¥60,000〜¥80,000 |
(相場は機種・プラン・時期で変動。最新はMaprental公式で確認)
週末の撮影プロジェクトで1泊2日。旅行や出張で1週間。長期プロジェクトで1ヶ月——これで¥277,200を回収する前に、「自分は本当にMavic 4 Proを月に何日使うのか」 が明らかになる。
月に1回2時間しか飛ばさないなら、買う必要はない。レンタルを10回借りても年¥12万、¥27.7万には届かない。
月に週末2日×3回=6日飛ばすなら、半年で所有分を上回る。買えばいい。
基準はシンプルだ。年間稼働日数が20日を超えるかどうか。 ここが損益分岐点になる。
わたくしの判定
空撮が仕事になっている人 → 買う
広告・不動産・映像制作・測量・建築撮影。1億画素のトリミング耐性、16ストップのダイナミックレンジ、インフィニティジンバル、51分飛行、O4+伝送——全てが案件単価に直結する装備だ。Creator Combo ¥418,000 の上位構成も、仕事の保険として妥当な投資になる。年間稼働20日を超えるなら、¥27.7万は撮影機材の最短ROI構成だ。
条件: 空撮が仕事になっている人(広告・不動産・映像制作・測量・建築撮影)で年間稼働日数が20日を超える人。
理由: 1億画素のトリミング耐性・16ストップDR・インフィニティジンバル・51分飛行・O4+伝送が全て案件単価に直結する。年20日超えなら¥27.7万は撮影機材の最短ROI構成。
条件 : 空撮が仕事になっている人(広告・不動産・映像制作・測量・建築撮影)で年間稼働日数が20日を超える人。
理由 : 1億画素のトリミング耐性・16ストップDR・インフィニティジンバル・51分飛行・O4+伝送が全て案件単価に直結する。年20日超えなら¥27.7万は撮影機材の最短ROI構成。
Mavic 3 Proを既に持っている人 → 待つ
Mavic 3 ProもDJI公式サポートが継続中だ。1億画素とインフィニティジンバルが明確に案件で必要でないなら、買い替える理由はない。Mavic 4 Proは発売から1年経過し、ファームウェアは安定してきた段階だが、Mavic 5系の噂が動き出す時期でもある。焦らず、案件の要求が現機材を超えた時点で判断すればいい。
条件: Mavic 3 Proを既に持っており、現機材で案件要求を満たせている人。
理由: Mavic 3 ProもDJI公式サポート継続中で、1億画素・インフィニティジンバルが案件で必須でないなら買い替える理由はない。Mavic 5系の噂が動き出す時期でもあり、案件要求が現機材を超えた時点で判断するのが合理的。
待つ
条件 : Mavic 3 Proを既に持っており、現機材で案件要求を満たせている人。
理由 : Mavic 3 ProもDJI公式サポート継続中で、1億画素・インフィニティジンバルが案件で必須でないなら買い替える理由はない。Mavic 5系の噂が動き出す時期でもあり、案件要求が現機材を超えた時点で判断するのが合理的。
年に数回の空撮 / 娘や家族の記録用途 → 買うな
Maprentalの1週間¥25,000〜¥35,000で、まず本物を触れ。所有の維持コストは価格以上に重い。バッテリー劣化、ファームウェア更新、保管場所、飛行許可申請の手間、墜落時の修理費。年に数回しか使わないなら、これら全てがレンタルに含まれる。¥27.7万を払う前に、まず¥3万で借りる。これが正解の順番だ。 日常の家族記録が目的ならさらに不要で、Pocket 4(¥79,200)かスマホで十分だ。ドローンは「広い絵」が必要な場面にしか効かない。しかも都市部では、気軽に飛ばせる場所がない。道具は「使える場所がある」ことと「使う理由がある」ことの両方が揃って初めて価値になる。
条件: 年に数回の空撮、または娘や家族の記録用途で買おうとしている人。
理由: バッテリー劣化・ファーム更新・保管・飛行許可申請・墜落修理費の維持コストがレンタルに含まれる。Maprentalで1週間¥25,000〜¥35,000で本物を触れる。年20日未満なら¥27.7万を払う前にまず¥3万で借りるのが正解の順番。
買うな
条件 : 年に数回の空撮、または娘や家族の記録用途で買おうとしている人。
理由 : バッテリー劣化・ファーム更新・保管・飛行許可申請・墜落修理費の維持コストがレンタルに含まれる。Maprentalで1週間¥25,000〜¥35,000で本物を触れる。年20日未満なら¥27.7万を払う前にまず¥3万で借りるのが正解の順番。
買う前に、レンタルで試す選択肢
本記事の価格・スペックは2026年4月19日時点のDJI公式情報(dji.com/jp/mavic-4-pro)に基づきます。レンタル料金はMaprental・GooPass等の一般的な相場感であり、実際の料金・取り扱い機種は各社公式サイトで確認してください。航空法に関する記述は国土交通省「無人航空機の飛行ルール」の2022年6月改正以降の運用に基づきます。飛行前には必ず最新の法令・自治体条例を確認してください。