札幌のアパート、深夜にパート代の明細を眺めていた時期の話をする。お小遣い1.5万円の時代に、わたくしが今のわたくしに渡したい1台を選ぶなら、これになる。

札幌のアパートで、Apple入社前のフリーター時代。スマホの機種変更は「奮発」という言葉がつく買い物だった。¥15万のiPhoneは、毎月の携帯料金に上乗せされる分割金が、重たい数字として残る。——あのころの自分が「それでもスマホに遊ばせてほしい」と感じるなら、選択肢は限られる。

Nothing Phone (3a) Proは、2025年3月発売(米国$459、日本並行輸入で約¥70,000)。搭載チップはSnapdragon 7s Gen 3——フラッグシップではなく、準ミドル。にもかかわらず、背面には50MPのペリスコープ望遠レンズを載せている。この価格帯のスマホに、3倍光学ズームのペリスコープが乗っているのは、2026年4月時点でも極めて珍しい。

(出典: nothing.tech/us.nothing.tech/droid-life.com 2025年3月発表記事)

 

「フラッグシップ感」を、¥7万で売る端末。——その中身を解体する。

 


Nothing Phone (3a) Pro の公式スペック

まず事実を並べる。日本では並行輸入が中心で、公式販売網は限定的(2026年4月時点)。米Nothing公式価格は$459(12GB+256GB)。

項目 Nothing Phone (3a) Pro Nothing Phone (3)
発売 2025年3月 2025年8月(日本)
価格 約¥70,000(並行輸入・$459米) 約¥124,000〜(Nothing JP公式)
ディスプレイ 6.77インチ AMOLED/120Hz/FHD+ 6.67インチ AMOLED/120Hz/4,500ニト
プロセッサ Snapdragon 7s Gen 3 Snapdragon 8s Gen 4
メインカメラ 50MP(OIS) 50MP(f/1.68)
望遠 50MP ペリスコープ 3倍光学 50MP ペリスコープ 3倍光学
超広角 8MP(120°) 50MP
フロントカメラ 50MP 50MP
背面 Glyph Interface(LEDストリップ) Glyph Matrix(489 LED ドットマトリクス)
バッテリー 5,000mAh/50W有線/7.5Wリバース 5,150mAh/65W有線/15Wワイヤレス
防水防塵 IP64 IP68
OSサポート Android 3世代/セキュリティ6年 Android 5世代/セキュリティ7年
ストレージ 12GB+256GB 256GB/512GB

¥70,000前後(並行輸入)。

[IMAGE_PLACEHOLDER: 札幌時代の狭いアパートのこたつ机に置かれた古い携帯と、新しい透明背面スマホを重ねた構図]

スペック表で見れば、(3a) Proは(3)の「お得版」ではなく、価格に沿って削るべきところを削った別設計の端末だ。

削られているのは、チップ(8s Gen 4 → 7s Gen 3)、超広角(50MP → 8MP)、背面LED(ドットマトリクス → 通常のGlyph)、防水(IP68 → IP64)、充電速度(65W → 50W)、ワイヤレス充電(あり → なし)、OSサポート期間。

残されているのは、50MPペリスコープ望遠レンズ、透明デザイン、Nothing OSの世界観

Nothingがこの端末で守ったのは、「カメラの撮影体験」と「デザインの純度」だった。


ペリスコープ望遠50MPが、この価格で乗る意味

ここが、この端末の心臓部だ。

2026年4月時点で、$459(¥7万)の価格帯にペリスコープ望遠レンズを搭載するAndroidスマホは、Nothing Phone (3a) Pro以外に存在しない。Pixel 9a($499)は望遠レンズ自体がない。iPhone 16e/17eも望遠レンズなし。Galaxy A56にもない。Nothingはこの価格帯に、3倍光学ズームを持ち込んだ唯一のブランドだ。

ペリスコープ望遠は、レンズを「縦に立てる」のではなく「横に寝かせて」本体内に収める構造で、本体を薄く保ったまま長い焦点距離を実現する。通常、ハイエンドのGalaxy S25 Ultra($1,299)やiPhone 17 Pro Max($1,199〜)に載る機構だ。$459のNothingが同じ構造を積んだことは、価格破壊という言葉が適切だと思う。

実用として何が変わるか。

子供の運動会、ライブ会場、空港の展望デッキ、カフェで向かいの席にいる相手の小さな仕草。——デジタルズームでは一気に画質が荒れる距離に、(3a) Proは3倍光学で踏み込める。60倍デジタルズームまで伸ばせるが、実用範囲は15倍程度までと考えるのが現実的だ。

ただし。

Android CentralやPhoneArenaのレビューが一致して指摘しているのは、カメラアプリの動作が重いという点だ。シャッターから撮影完了までのラグ、HDR処理のばらつき、RAW現像の安定性——Pixelの「雑に構えて押せば記録写真になる」という完成度には、届いていない。

「撮る楽しみがある」端末だ。「撮れば勝手に上手く写る」端末ではない。

この区別が大事になる。スマホを「記録装置」として使う人間には、Pixel 9aのほうが間違いなく快適だ。(3a) Proを選ぶ意味は、カメラを道具として遊ぶことに価値を置けるかどうかで決まる。

 

望遠レンズは、カメラの役割を「記録」から「選択」に変える。

 


所有すると出てくる、小さな摩擦3つ

並行輸入の低価格Android機を過去に使った経験から、(3a) Proで必ず出る摩擦を3つ書く。

一つ目。Snapdragon 7s Gen 3の発熱。ペリスコープ望遠で長時間撮影、またはゲームを連続すると、筐体背面の温度が明確に上がる。——海外フォーラムでは「夏場の野外撮影で20分連続使うと熱で画面輝度が自動ダウン」という報告が複数。フラッグシップチップとは明確に差がある。

二つ目。並行輸入でのアップデート受信遅延。日本正規販売がないため、Nothing OSのメジャーアップデートが海外版から遅れて配信されることがある。——早くGemini系AI機能を触りたい人にとって、数週間〜数ヶ月の待ち時間は苛立ちになる。

三つ目。IP64とカフェの水滴事故。IP68ではないので、カフェのテーブルで水滴を落とした程度でも、充電ポート側に入り込むとトラブルの元になる。実売¥7万の機体で、Apple Storeのような即日修理網は期待できない。——ケース必須運用と、水の近くに置かない習慣がセット。

[IMAGE_PLACEHOLDER: カフェのテーブルで水滴のついたマグカップの横に Nothing Phone (3a) Pro が置かれている構図]

これを踏まえた上で、¥7万の価値判定に進む。


Pixel 9a/iPhone 17e との比較

¥7万前後で買えるスマホの、主要3択を並べる。

項目 Nothing Phone (3a) Pro Pixel 9a iPhone 17e
米国価格 $459 $499 $599
日本実売(2026年4月) 並行輸入 約¥70,000 約¥79,900 ¥99,800〜(256GB)
プロセッサ Snapdragon 7s Gen 3 Google Tensor G4 Apple A19 + C1X
メインカメラ 50MP 48MP 48MP Fusion
望遠 50MP 3倍光学ペリスコープ なし なし
OSサポート Android 3世代/セキュリティ6年 Android 7世代/セキュリティ7年 iOS 6〜7年(Apple慣例)
FeliCa 非対応 対応 対応
防水 IP64 IP68 IP68

出典: Nothing公式、store.google.com/jp、apple.com/jp、Apple Newsroom 2026-03-02発表。

3つの端末は、それぞれ別の価値観で作られている。

Pixel 9a は「平均点の高い堅実な写真機」。望遠レンズはないが、Google PhotosとTensor G4の画像処理が補う。7年のOSサポートは業界最長。FeliCaあり。迷ったらこれ、という立ち位置だ。

iPhone 17e は「iPhoneの最も安い入り口」。A19チップは上位のiPhone 17と同世代、性能に妥協がない。ただし¥99,800〜で、Nothing (3a) Proとの差額は¥30,000。この差額でiOSとFeliCaと修理網を買う——という選択になる。

Nothing Phone (3a) Pro は「¥7万で買える、撮る楽しみと個性の端末」。平均点は低い。FeliCaなし、OSサポート短め、カメラアプリのラグ。——しかし、望遠レンズと透明背面を¥7万で手に入れる方法は、2026年4月時点でこれ以外にない。

「安全な1台」を探すならPixel 9a。「iPhone経済圏に入る1台」を探すならiPhone 17e。「遊べる1台」を探すならNothing Phone (3a) Pro。——問いが違えば、答えが違う。


Nothing Phone (3) との住み分け

姉妹機のPhone (3)との関係を、整理する。

Phone (3)は¥124,000。(3a) Proは¥70,000。価格差は約¥5.4万

この¥5.4万で何が変わるか、冷静に数える。

チップが一段上がる(7s Gen 3 → 8s Gen 4)。ゲームや動画編集の持続性能で差が出る。
Glyph MatrixというLEDドットマトリクスが背面に乗る。489個のミニLEDで時計・タイマー・アニメーションを表示できる思想的装備。
防水がIP68に上がる。水没耐性で差が出る。
ワイヤレス充電が追加される。
超広角が50MP((3a) Proは8MP)。
OSサポートが5世代7年((3a) Proは3世代6年)。

逆に言えば——望遠レンズ性能はほぼ同じ(どちらも50MPペリスコープ3倍光学)。メインカメラも50MP。Nothing OSの世界観も同じ。透明デザインも同じ。

¥5.4万を払って「より長く、より多機能に、より重いゲームもこなせる」Nothing体験を買うか。あるいは¥7万に抑えて「カメラ遊びとデザインの核だけ」を買うか。

お小遣い1.5万円時代のわたくしが選ぶなら、(3a) Proのほうだ。Phone (3)のGlyph Matrixは魅力的だが、¥5.4万の差額はあのころのわたくしにとって、3ヶ月分のスマホ料金に近い重さだった。その金額を「背面のLEDアニメーション」に払う決断は、できなかったと思う。

¥7万で、望遠レンズと透明背面とNothing OSが手に入る。——これは、低予算時代の自分へのギフトとして、十分に筋が通っている。


わたくしの判定

写真で遊びたい / FeliCaを使わない / 低予算で"カメラ遊び端末"が欲しい人 → 買う

メインのスマホがiPhoneで、セカンドとして「カメラ遊び」の端末が欲しい。あるいはSIMフリーで使う前提で、¥7万以内に収めたい。——この2条件が揃うなら、Nothing Phone (3a) Proは現時点での最適解に近い。$459(¥7万前後)でペリスコープ望遠が乗る端末は、他にない。また、札幌のフリーター時代のわたくしが、今のわたくしからこの端末を渡されたら、間違いなく喜ぶ。¥7万の投資で、毎日の散歩が「撮影」に変わる。透明背面を見るたび、他のスマホとは違う何かを手にしている感覚がある。——スマホに¥15万払うと決断できないけれど、スマホで遊びたい気持ちはある人間にとって、Nothing Phone (3a) Proは「ちょうど届く」1台だ。¥70,000前後(並行輸入)。

買う

条件: メインスマホがiPhoneでセカンドとして「カメラ遊び端末」が欲しい人。FeliCa非依存・SIMフリー前提で¥7万以内に収めたい人。

理由: 2026年4月時点、$459(¥7万前後)の価格帯でペリスコープ望遠を搭載するAndroidは(3a) Proのみ。透明背面とNothing OSの世界観も保ったまま、毎日の散歩が「撮影」に変わる。

Nothing Phone (3a) Pro をNothing公式で見る(約¥70,000〜)

Android性能重視・ゲームも動画編集も本気でやる人 → 待つ

Snapdragon 7s Gen 3は、日常使いで困らないが、最新ゲームや4K動画編集の持続性能では力不足だ。本気のAndroid性能を求めるなら、Nothing Phone (3)(¥124,000、Snapdragon 8s Gen 4)まで上げるか、Pixel 10 Pro・Galaxy S26 Ultraまで予算を伸ばすほうが、後悔が少ない。

待つ

条件: 最新ゲームや4K動画編集など、Androidの持続性能を本気で求める人。

理由: Snapdragon 7s Gen 3は日常では困らないが負荷時に明確に頭打ちになる。Nothing Phone (3)(8s Gen 4)まで上げるか、Pixel 10 Pro / Galaxy S26 Ultraまで予算を伸ばすほうが後悔が少ない。

Nothing公式で仕様を確認

毎日Suicaで電車に乗る・Pay系決済を毎日使う人 → 買うな

(3a) ProはFeliCa非対応。改札もコンビニも、毎日使うたびに不便が続く。¥7万の魅力はあっても、日常の摩擦は毎日積み重なる。この用途なら、差額¥1万のPixel 9a(¥79,900、FeliCa対応)を選ぶほうが、365日単位で幸福度が高い。

買うな

条件: 毎日Suicaで改札を通り、コンビニ・カフェでPay系決済を使うメインスマホ用途の人。

理由: (3a) ProはFeliCa非対応で、毎日小さな摩擦が積み重なる。差額¥1万のPixel 9a(¥79,900・FeliCa対応)を選ぶほうが365日単位で幸福度が高い。


本記事の価格・スペックは2026年4月時点のNothing公式情報(nothing.tech/us.nothing.tech/products/phone-3a-pro)、Google公式(store.google.com/jp)、Apple Newsroom(2026年3月2日 iPhone 17e発表)に基づきます。Nothing Phone (3a) Proの日本販売は並行輸入が中心で、実売価格は販売チャネル・為替・時期により変動します。米国価格$459は2025年3月11日発売時点のNothing公式価格。レビュー引用はAndroid Central、PhoneArena、Android Authorityの2025年レビュー記事を参照しています。