Sony ZV-1 II、YouTuberが絶賛した時代の答え合わせをする
結論から言う。
2026年の今、Sony ZV-1 IIを買うなら、スマホで十分だ。
わたくしは買わない。中途半端すぎる。
正直に書く。初代ZV-1が出た2020年、YouTuberの多くがこのカメラを絶賛した。「Vlogに最適」「1インチセンサーの余裕」「軽量コンパクト」。誰もが同じことを言っていた。
だが考えてほしい。彼らはSonyから機材提供を受けている。無料でカメラをもらった人間が「これは買わなくていい」と言うだろうか。
言わない。わたくしが同じ立場でも言わない。
あの時代の「ZV-1ブーム」を振り返る
2020年、コロナ禍でYouTubeを始める人が急増した。Vlog文化が一気に花開いた。そこにSonyがぶつけてきたのがZV-1だった。
- 1インチセンサー搭載
- 24-70mm相当の便利ズーム
- 自撮り特化のバリアングル液晶
- 商品レビューモード(被写体を顔より優先してAFを合わせる)
- 外部マイク端子
- 軽量コンパクト(約294g)
「Vlog専用機」というポジショニング。これは当時、革命的だった。
そしてSonyは積極的にYouTuberへ機材提供した。Vlog系、ガジェット系、カメラ系、あらゆるチャンネルが「ZV-1レビュー」を上げた。レビューの内容は、ほぼ例外なく好意的だった。
わたくしはこれを批判しているわけではない。Sonyの戦略は正しかった。YouTuberたちも、実際に便利だと感じていたのは本当だろう。
だがそれは2020年の話だ。2026年の今、同じ結論が成立するかどうか。ここが問いだ。
今のスマホのカメラで困っていますか?
2020年のスマホと2026年のスマホは、別物だ。
iPhone 17 Pro、Google Pixel、Galaxy Sシリーズ。これらのメインカメラは、もはや1インチセンサーのコンデジに「迫る」レベルではない。多くの場面で越えている。
- 広角・超広角・望遠の3レンズ構成
- AIによる画像処理が常時稼働
- 手ぶれ補正は電子+光学のハイブリッド
- 動���は4K 60fps〜120fps HDR
- RAW撮影対応
- ProRes/Log撮影対応(一部機種)
- スマホだから常時持ち歩ける
ZV-1 IIを買う前に、今使っているスマホで本当に足りないのかを自問してほしい。
「1インチセンサー」の幻想
ZV-1シリーズの最大のセールスポイントは「1インチセンサー」だ。
スマホのカメラセンサー(1/1.3インチ前後)より物理的に大きい。画質の余裕、暗所性能、ボケ量——理論上はすべて上回る。
だが、「理論上」と「実際の使用体験」には大きな差がある。
暗所性能について
「1インチセンサーなら暗所に強い」——これは半分だけ正しい。
同じISO感度で比較すれば、1インチセンサーはスマホよりノイズが少ない。それは事実だ。だが2026年のスマホは複数枚合成(ナイトモード)で暗所を撮る。数秒間、カメラを構えるだけで、明るくノイズの少ない写真が出てくる。
1インチの物理的優位を、スマホのソフトウェアが埋める時代だ。
そしてもう一つ問いたい。あなたは暗所でモデルさんを撮影する機会がどれだけあるか。ほとんどの人にとって、暗所撮影は「夜の街並み」か「居酒屋の料理」だ。その程度なら、スマホのナイトモードで十分すぎる。
ボケ量について
1インチセンサーのボケは、フルサイズや中判と比べれば小さい。スマホのポートレートモード(ソフトウェアボケ)と比べて「自然」ではあるが、決定的な差ではない。
本気でボケを楽しみたいなら、APS-Cやフルサイズのミラーレスを買うべきだ。1インチは「中途半端にボケる」という、一番つまらない立ち位置にいる。
ZV-1 IIの進化点
ZV-1からZV-1 IIへの進化はある。公平に書く。
- 広角側が18mm相当に拡大(初代は24mm相当)。Vlogで自撮りする時の画角が広くなった
- ワイドテレ可変ND改善
- カラー設定の拡張(Creative Look)
- 商品レビューモード・ボケフェイスモードの継承
悪くない進化だ。特に18mm相当の広角は、自撮り時に背景が広く入るので、Vloggerには価値がある。
だが本質は変わっていない。1インチセンサー、便利ズーム、中途半端なVlog専用機。この立ち位置は変わらない。
今、ZV-1 IIを買うべき人はいるか
正直に検討する。
Vlogを始めたい人 → iPhoneで始めろ
初心者がVlogを始めるなら、今持っているiPhoneかPixelで十分だ。無料で試して、本気で続けるならその時に初めて専用機を検討する。ZV-1 IIから始める必要はない。
子供・家族を撮りたい人 → スマホか、小型ミラーレス
日常の家族写真なら、スマホで十分。本気で綺麗に残したいなら、Nikon Zfの40mm f/2 SEキットのような小型フルサイズミラーレスの方が満足度が高い。
旅行用のカメラが欲しい人 → スマホ+モバイルバッテリー
旅行で「カメラを持っていくかどうか迷う」ぐらいなら、最初から持って行かない方がいい。荷物が増えるだけで、結局スマホで撮る。迷う時間とカバンの重さ、これも見えないコストだ。
商品レビューYouTubeをやりたい人 → 一応、選択肢
商品レビューモードはZV-1シリーズ独自の機能で、確かに便利だ。ただし2026年はiPhone Proを使えば似たような映像は十分撮れる。ZV-1 IIでなければ撮れない映像はほぼない。
動画専用のサブ機としてすでに何か持っている人
メインカメラにミラーレスを持っていて、軽量なサブ機として使うなら価値はある。ただしその場合、より軽量なDJI Osmo Pocket 3や小型のアクションカメラの方がニーズに合うケースが多い。
YouTuber絶賛時代の答え合わせ
ここで立ち止まって考えてほしい。
2020年にZV-1を絶賛していたYouTuberたちは、今も使っているだろうか。
答えはほとんどがNoだ。彼らの最新動画を見てほしい。多くはフルサイズミラーレス(Sony α7S III、Canon R5 C等)に移行している。ZV-1は「Vlog入門機」「持ち出し用サブ機」の位置に追いやられ、そして静かにフェードアウトした。
これがレビュー動画と現実の乖離だ。
わたくしは彼らを責めない。レビュー動画を出すこと自体、機材を使い込むこととは別の営みだ。Sonyから提供を受けた時点では、本当に良いと感じていたはずだ。
だがわたくしたち視聴者は、そのレビューを「永遠の真実」として受け取ってはいけない。レビューには時期がある。賞味期限がある。2020年のレビューは、2020年の文脈で正しかっただけだ。
そしてレビュー動画を追いかけ続けること自体が、見えないコストだ。毎日1時間ガジェットレビューを見続けていれば、年間で365時間。そこから得た「欲しい欲」に駆られて買ったカメラが、引き出しで眠る。わたくしはこれを何度もやってきた。
それでも買うなら
買っていい条件(すべて満たす必要あり):
- 既にミラーレスをメインで使っていて、軽量なサブ機として明確に位置づけられる
- 商品レビューモードが業務上どうしても必要
- 中古・整備済で4〜6万円で入手できる(新品定価は避ける)
- 「Vlog始めてみたい」ではなく「Vlogをすでに続けていて、専用機が必要だと確信している」
4つすべて満たせば、買ってもいい。1つでも当てはまらないなら、スマホで十分だ。
それでも買う人へ
Sony VLOGCAM ZV-1 II
はカメラのキタムラで購入できる。
新品で買う前に、中古相場を必ず確認してほしい。ZV-1シリーズは市場に大量に出回っているため、状態の良い中古が定価の半額以下で買えることが多い。いいタイミングで、いいモノを、必要な範囲内で。
わたくしの結論
わたくしはSony ZV-1 IIを買わない。
理由はシンプルだ。中途半端だから。
- スマホを越える画質? → 越えていない部分も多い
- ミラーレスに迫るボケ? → 迫っていない
- コンパクトさ? → スマホの方が小さい
- AF? → iPhoneのフォーカスも十分速い
- 動画? → iPhoneのProResでいい
どれを取っても、上にスマホがあり、下にミラーレスがある。真ん中に座ってしまった1インチコンデジは、2026年の市場で居場所を失っている。
2020年のZV-1ブームは本物だった。だがそれは「コロナ禍でVlog需要が急増し、スマホの動画性能がまだ今ほど高くなかった」という、特殊な時代の産物だ。その時代は終わった。
スマホを使え。それで困ったら、その時初めてカメラを買え。 順序を間違えるな。
本記事は2026年4月時点の情報と、わたくし自身のコンデジ・ミラーレス使用経験に基づきます。
本記事の価格・スペックは2026年4月時点の各メーカー公式情報およびAmazon・楽天・カメラのキタムラ等の実売価格に基づきます。価格は変動するため、購入時に各社公式サイトで最新情報をご確認ください。