結論から言う。

AirPods Proを持っているなら、Shokz OpenFit 2+を買う必要はない。今使っているイヤホンが壊れるまで、何も買うな。

サカナクションの山口一郎氏が広告塔になり、SNSで頻繁に見かけるようになった。価格は27,880円。決して安くない。

そしてわたくしは、この記事を書きながらAmazonのカートに入れたOpenFit 2+を、たった今、削除した。


なぜ今、オープンイヤー型が注目されているのか

正直に書く。世の中はノイズキャンセリングに疲れてきている

朝から晩までAirPods ProのANCで外界を遮断する生活。最初は快適だった。集中できる、静かになる、音楽に没頭できる。だが半年も続けると、奇妙な疲労感に襲われる。

  • 耳の閉塞感
  • 取り外したときの違和感
  • 周囲の音が「戻ってくる」ときの脳への負担
  • イヤーチップによる耳の蒸れ

わたくしも経験した。1日8時間ANCを使った日の夜、耳の奥がぼんやりと熱を持つ感覚。あれはおそらく、脳が「外界の音がない不自然な状態」を処理し続けた結果だ。

ここにShokzのオープンイヤー戦略が刺さる。「耳を塞がない、だけど音楽は聴ける」。ANC疲れの解決策として、確かに筋がいい。


Shokz OpenFit 2+ のスペック

項目OpenFit 2+
発売日2025年8月28日
価格27,880円
形状オープンイヤー型(耳掛け)
重量9.4g(イヤホン単体)
防水IP55
Bluetooth5.4(マルチポイント対応)
コーデックSBC / AAC(LDAC非対応
ドライバーデュアルブースト(17.3mm低周波 + 高周波)
バッテリー単体11時間 / ケース併用48時間
充電有線60分 / ワイヤレス対応
操作物理ボタン(タッチも可)
音響Dolby Audio、OpenBass 2.0、DirectPitch 2.0

(2026年4月時点・Shokz公式スペック)

レビュアーたちの評価は上々だ。「14時間着けっぱなしでも痛くならない」「初代より音量が上がった」「物理ボタンで誤操作のストレスがゼロ」。

そして山口一郎コラボの限定モデル(300個・2月25日〜3月1日抽選販売)は「ファンでなくても欲しくなる」という声が多かった。


今のイヤホンで困っていますか?

ここがすべての出発点だ。

AirPods Proを使っていて、何か困っているか?

「ANCが疲れる」と感じているなら、解決策は2つある。

  1. ノイキャンを切る(無料)
  2. オープンイヤー型を買い足す(27,880円)

選択肢1を試してみてほしい。Apple純正イヤホンの設定からANCを「オフ」にするか、「外部音取り込み」モードを使う。これでANC疲れの大半は解消される。それでも足りないなら、初めて選択肢2を検討する番だ。


何に困っていますか?

OpenFit 2+への買い替えが正当化される具体的な不満は3つだ。

1. 耳の閉塞感が辛い

AirPods Proは「外部音取り込み」モードを使ってもイヤーチップで耳を塞いでいる。物理的に耳を塞がない設計が必要なら、オープンイヤー型一択だ。

ただし、Shokz以外にもオープンイヤー型はある。ソニー LinkBuds Open、Bose Ultra Open、HUAWEI FreeClipなど。Shokz OpenFit 2+を選ぶ理由は別途必要だ。

2. 自宅で家族の声を聞きながら音楽を聴きたい

これはオープンイヤー型の真骨頂だ。子供がいる家庭、配偶者から頻繁に話しかけられる人。外音取り込みでは「処理された音」が聞こえるが、オープンイヤーは「生の音」が聞こえる。質的に違う。

わたくしも在宅勤務中、娘の声が聞こえなかったことが何度もある。妻に「呼んでも反応しない」と怒られた。

3. ランニング・ウォーキングで周囲の音を聞き取りたい

ランニング、徒歩通勤、街中の散歩。周囲の音が必要なシーンでは、オープンイヤー型が優位だ。車の音、アナウンス、人の声。耳を塞がないことで得られる安心感は、ANC全振りのAirPods Proでは手に入らない価値だ。


OpenFit 2+ vs その上位モデル「OpenFit Pro」

ここで重要な情報がある。

4月22日、Shokz OpenFit Proが発売される。 価格39,880円。ハイエンドモデルだ。

項目OpenFit 2+OpenFit Pro
発売2025年8月2026年4月22日
価格27,880円39,880円
重量9.4g12.3g
Bluetooth5.46.1
ドライバー17.3mm + 高周波新開発デュアルダイヤフラム(11×20mm)
フォーカスモードなしあり(オープン状態でのノイズ低減)
DolbyAudioAtmos + ヘッドトラッキング
マイクデュアルトリプルマイクアレイ(AI音声認識)
バッテリー11時間12時間(フォーカスON時6時間)
急速充電10分→2時間10分→4時間

(2026年4月時点・Shokz公式スペック)

「フォーカスモード」が異常に面白い。 オープンイヤー型なのにノイズ低減が効く。エアコンやオフィスのざわめきが「スッと静かになる」とレビュアーが評価している。

ただし4万円。そしてフォーカスモードONでバッテリーが半減する。


そのイヤホン、1年のうち何%使うのか?

もう1つ、買う前に考えてほしいことがある。

計算してみてほしい。

通勤時間が往復2時間(片道1時間)、年間労働日数240日とすると——

  • 通勤でイヤホンを使う時間: 年480時間
  • 1年の総時間: 8,760時間
  • 使用率: 約5.5%

つまりあなたが27,880円を払うイヤホンは、1年のうち5.5%しか通勤では使わない。残り94.5%の時間は家、職場、その他の場所で過ごしている。

ここで問いたい。家でも、そのイヤホンを使うのか?

家にスピーカーはないか。職場では別のイヤホンを使っていないか。Bluetoothスピーカーの方が家族と一緒に音楽を聴ける。職場で支給された��ッドセットがある人もいる。

使用率5.5%のために27,880円を払うなら、1時間あたり58円。コーヒー1杯より少し安い。これを「高い」と感じるか「妥当」と感じるかは、あなたの通勤体験の質次第だ。

そしてもう一つ言わせてほしい。通勤時間こそ、何も聴かない時間にしてもいい。窓の外を見る、思考を整理する、何もしない。それも豊かな時間だ。


本当のコスト

27,880円で何ができるか。

  • AirPods 4 ANC(29,800円)と1,920円差。同じ価格帯
  • AirPods Pro 3(39,800円)の約7割
  • お小遣い15,000円の約2ヶ月分

そして見えないコスト。

1. 充電するイヤホンが2つになる。 AirPods Pro + OpenFit 2+。毎日2つを管理する。ケースも2つ。カバンが重くなる。

2. 用途を切り替える判断時間。 「今は静かな環境だからAirPods Pro」「今は家族と一緒だからOpenFit」。この判断を毎日繰り返す。微妙にストレスだ。

3. 1ヶ月後、片方しか使わなくなる。 わたくしの経験則だ。複数のイヤホンを買った人の8割は、1ヶ月後にはどちらか片方しか使っていない。引き出しに眠る方が、3万円の墓標になる。


必要なら、いいモノを、いいタイミングで

それでも「ANC疲れが本当に辛い」なら、買う選択は正当だ。ただし買い方には条件がある。

待て。OpenFit Proを待て。

4月22日に発売されるOpenFit Proを見てから決めろ。

価格差は12,000円。だがフォーカスモード(オープン型ノイズ低減)は、OpenFit 2+にはない機能だ。ANC疲れの原因が「ノイキャンそのもの」ではなく「耳を塞ぐこと」だったと気づいたなら、フォーカスモードはまさに最適解だ。

OpenFit Proを試してから「やっぱり2+でいい」と判断するなら、価格差12,000円でセール待ちのOpenFit 2+を買えばいい。逆はできない。

山口一郎コラボの限定モデルは追うな

300個限定、抽選販売。シリアルナンバー入り。パッケージは平林奈緒美氏デザイン。

ファンならわかる。「物」ではなく「物語」を買う消費だ。それは正当な感情だ。

ただし、転売市場でプレ値を払うのは違う。Ricoh GR IVの記事でも書いた。プレ値で払った差額は永遠に戻ってこない。 抽選に外れたら、諦めろ。それで生活の質は下がらない。


わたくしの結論

わたくしはサカナクションが好きだ。広告を見るたびに、カートに入れて、削除する作業を繰り返している。

だが冷静に見ると、わたくしのAirPods Proはまだ壊れていない。バッテリーは劣化してきたが、Apple公式で15,800円のバッテリー交換で延命できる。

オープンイヤー型は確かに面白い。ANC疲れは現実の問題だ。だが今のイヤホンが現役で動いているうちに、新しいものを買い足す理由はない

買うべきタイミングは2つしかない。

  1. AirPods Proが完全に壊れた時 — そのときに最新のオープンイヤー型を選ぶ
  2. ANC疲れがどうしても辛い時 — それでもまずANCをオフにして1週間試してから買え

それまでは、Shokzの広告を見たら、わたくしと一緒に深呼吸をしてカートを閉じてほしい。

今のものを大事に使う。 これがZen Gadgetの第一の哲学だ。


本記事の価格・スペックは2026年4月時点のShokz公式情報に基づきます。