Hasselblad X2D II 100C、自慢できる友達がいないなら絶対に買うな
結論から言う。
初代X2Dのオーナーとして断言する。Hasselblad X2D II 100Cも、ほとんどの人にとっては買うな。
わたくしはLeica M11を売った金で、Hasselblad X2D 100C(初代)を買った。人生で最も高い授業料だった。
X2D II 100Cは2025年秋に登場した最新モデルだ。基本設計やセンサーは初代と共通の1億画素中判路線を継いでいる。だからわたくしの後悔は、これから買おうとしているあなたの未来でもある。
Leica M11を売ってHasselbladに行った男の話
まず、わたくしの失敗から始める。
わたくしはLeica M11を持っていた。マニュアルフォーカス、6000万画素のフルサイズセンサー、レンジファインダー。不便だが、撮る行為そのものが楽しい唯一無二のカメラだった。
そこにHasselblad X2D 100Cが出た。
1億画素。中判センサー(43.8×32.9mm)。AF搭載。ハッセルブラッド・ナチュラル・カラー・ソリューション(HNCS)。数値と言葉だけで酔った。
「これがあればM11は要らない」と思った。LeicaとHasselbladを両方持つ経済力はない。M11を売って、X2D 100Cを買った。
この判断を、わたくしは今でも後悔している。
認める——本当にすごいカメラだ
Hasselbladを貶すために書いているわけではない。使った上で、本当に良いところから書く。
- 1億画素の解像度(1/4にトリミングしても2500万画素残る)
- 中判センサー(35mmフルサイズの約1.7倍の面積)
- ハッセルブラッドの色味(肌の階調、空の青、木々の緑、すべてが特別)
- オートフォーカス搭載(初代Xシリーズから大幅改善)
- ボディ内手ぶれ補正
- 大容量の内蔵SSD(構成により1TB以上)
- ビルドクオリティ(削り出しアルミの質感は家宝レベル)
これだけ並べれば、誰でも欲しくなる。わたくしもそうだった。
問題は、数字と所有欲以外のすべてだ。
地獄その1 —— RAWファイルが重すぎる
使い始めて、すぐに気づいた。
Hasselbladの16bit非圧縮RAW(3FR/FFF)は、1枚あたり700MB級になる。圧縮設定や撮影条件によって200〜400MB程度に抑えられる場面もあるが、最高画質を引き出したい時ほどファイルは肥大化する。
1億画素・16bit・中判センサー。物理法則に逆らえない。1回の撮影で100枚撮ったら、数十GB。1日撮影しただけで、SSDが埋まっていく感覚がある。
だから毎日、データ整理に追われる。
- 撮影後にMacに取り込む(長い)
- Lightroomで現像する(タブ切り替えでさえ待ちが発生する)
- 書き出す(1枚あたり数秒〜十数秒)
- バックアップを取る(外付けSSDにさらに時間)
- 元データをどこに保管するか毎回悩む
撮影そのものより、データ管理の時間が長くなった。わたくしは写真を撮りたかった。データを整理したかったのではない。
そして気づいた。Instagramに上げる写真に1億画素は要らない。家族に見せる写真に1億画素は要らない。プリントするにしても、A3サイズでも2400万画素で十分だ。
1億画素は、ほとんどの人にとって「見えないコスト」の入口だ。時間とストレージを確実に奪っていく。
地獄その2 —— レンズが品薄で妥協させられた
もう一つの罠があった。レンズだ。
Hasselblad XマウントのレンズラインナップはSony/Canon/Nikonとは比較にならないほど少ない。そして新シリーズ(XCDレンズ)の人気モデルは品薄で、まともに買えない。
わたくしも待ちきれず、古い世代のレンズを妥協して買った。性能は悪くない。だが最新の光学設計と比べると明確に落ちる。
1億画素のセンサーの解像力に、レンズが追いつかない。本末転倒だ。
「1億画素の高解像度を活かすために、レンズも最高級を」と思っていた。結果は、「品薄で選べないので、古いレンズで妥協」だった。
M11のままの方が良かった
ここが本題だ。
わたくしはM11を売るべきではなかった。
| 項目 | Leica M11 | Hasselblad X2D 100C (初代) |
|---|---|---|
| 画素数 | 6000万画素 | 1億画素 |
| 1枚あたりRAWサイズ | 約40〜80MB(DNG圧縮) | 200〜700MB級 |
| AF | なし(MF) | あり |
| 色味 | Leicaの色 | Hasselbladの色 |
| ボディ重量 | 約530g(バッテリー込み) | 約895g |
| 価格(発売時・日本) | 約118万円 | 約128万円 |
| 持ち出す頻度(わたくしの場合) | 毎日 | 月1回 |
(2026年4月時点・各社公式情報およびわたくしの実体験)
M11の方が軽い。扱いやすい。ファイルサイズも現実的。MFは不便だが、それも含めて「撮る行為」が楽しかった。
そしてAFが欲しかったなら、M11を売ってSony α7R V(6100万画素・実売35〜42万円)を買い増す方が遥かに賢かった。高画素もAFも両取りできる上に、レンズが圧倒的に豊富で、価格はHasselbladの1/3だ。
「持ってる優越感」しか得られない
正直に書く。
X2D II 100Cで撮った写真と、Nikon ZfやSony α7R Vで撮った写真を、SNSに並べて、見分けられる人間はほぼ存在しない。
- スマートフォンの画面で見る(縮小されて差がわからない)
- Instagramにアップする(圧縮で差が消える)
- LINEで送る(低解像度化で差が消える)
- プリントしても四つ切りサイズなら差がわからない
大伸ばしプリントを家に飾る人、1億画素の作品を商業利用する人——ここにだけ、X2D II 100Cの真価が発揮される。
それ以外の人が得るのは、「自分はHasselbladを持っている」という優越感だけだ。
自慢できる友達がいるかどうかが全て
わたくしが導き出した最終的な判断基準はこれだ。
X2D II 100Cを買っていいのは、「自慢できる友達がいる人」だけだ。
カメラ好きの友達が周りに10人以上いる。彼らとカメラ談義をする場がある。Hasselbladを持っている人に会うと、お互いに「わかる」と頷ける。そういう環境にいる人にとって、X2Dは所有する喜びがある。
だが、それも最初の1回だけだ。
2回目以降、同じ友達に何度もカメラを見せても反応は薄くなる。そしてカメラ自体は、EV車のようにリセールバリューがナイフのように鋭く落ちていく。
具体的な数字は出さない。出典の保証ができない。だが中古市場を見る限り、Hasselbladの中古買取は下落幅が大きい部類に入る。マップカメラやカメラのキタムラの買取相場を調べてみてほしい。発売から2年経過したX2Dの買取額を見れば、わたくしの言っていることがわかる。
1回の自慢のために100万円単位の減価償却を受け入れられるか。これが問いだ。
代替案 —— もっと賢い選択肢
「1億画素の中判が欲しい」「特別な色味が欲しい」——その気持ちはわかる。わたくしもそうだった。
だが以下の代替案を本気で検討してほしい。
代替案1: Leica M11のまま使う
MFの不便さと引き換えに、撮る行為そのものの喜びが得られる。リセールバリューはHasselbladより安定している。
代替案1.5: Leica M EV1(老眼でレンジファインダーが辛くなってきた人向け)
もしあなたが長年Leica Mを使っていて、老眼でレンジファインダーのピント合わせが辛くなってきたなら、2026年の新型Leica M EV1
が救世主になる。Leica M型初の電子ビューファインダー(EVF)搭載機だ。
本体価格は¥1,397,000(2025年11月発売・2026年4月時点ライカ公式)。ローン60回払いなら月約23,000円の覚悟だ。わたくしの過去の失敗(M11を売った判断)と違って、M EV1は「Leicaを長く使い続けるための投資」になる。老眼問題を抱えるLeicaユーザーにとって、これは代替手段のない選択肢だ。
詳しくはLeica M EV1の記事で書いた。X2D II 100C(¥1,155,000)とM EV1(¥1,397,000)は近い価格帯だが、資産価値と長期使用の観点ではM EV1の方が圧倒的に賢い選択だ。
代替案2: Sony α7R V
6100万画素。AF最強クラス。実売35〜42万円。「高画素が欲しい」だけなら、これで十分すぎる。レンズも豊富。
代替案3: Fujifilm GFX100S II
中判センサー、1億画素、Hasselbladと肩を並べる画質。価格は約90万円。X2Dより大幅に安い。レンズラインナップもHasselbladより豊富。
代替案4: Nikon Z8 / Z9
4500万画素。プロ向け。AF最強、動画も強い。約60〜80万円。オールラウンダーとして完成している。
わたくしが今の知識で当時に戻れるなら、M11を売らずに持ち続けて、Sony α7R Vを買い増す。M11は趣味、α7R Vは実用。両方の役割を1台で背負わせようとしたのが失敗だった。
わたくしの結論
わたくしはM11を売って、X2D 100Cを買って、後悔した。その授業料は、あなたのために文字にした。
もし以下のすべてに当てはまるなら、買っていい。
- カメラに使える予算が150万円以上ある(本体+レンズ+アクセサリ込み)
- 自慢できるカメラ好きの友達が10人以上いる
- 大伸ばしプリントを日常的にする
- 大容量RAWファイルを扱えるストレージとマシンパワーがある
- データ管理に1日1時間費やしても苦にならない
- リセールバリューが大幅に下がっても後悔しない経済的余裕がある
- そしてなにより、「数値ではなく所有そのものに価値を見出せる」人間である
1つでも当てはまらないなら、買うな。M11にしろ、α7R Vにしろ、GFX100S IIにしろ、同等以上の体験が半額以下で手に入る。
それでも「自分は7つすべてに当てはまる」と判断したなら、わたくしは止めない。Hasselblad X2D II 100C
はカメラのキタムラで購入できる。
見えないコストを考えろ。時間、容量、リセール、そして家族の時間。Hasselbladを眺めて優越感に浸っている30分があれば、子供と一緒に写真を撮りに行ける。
どちらが豊かな人生か。答えは明白だ。
本記事はわたくし自身のHasselblad X2D 100C(初代)購入・使用経験と、2026年4月時点の公開情報に基づきます。X2D II 100Cの具体的仕様は購入前にメーカー公式サイトで必ず確認してください。