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今日のテーマはAirPods Max 2です。

これから夏が来る。そのタイミングで、頭に386gのオーバーイヤーを載せるのか、という話を僕はしたい。

386gというのは、缶コーヒーをひとまわり超えるくらいの重さだ。それを耳の上に、何時間も。冷房の効いた部屋ならまだいい。問題はその外側にある。

AirPods Max 2は89,800円。アルミの質感、ノイズキャンセリングは初代の1.5倍、ANC有効で20時間持つ。スペックだけ追えば、文句のつけようがない。中域、つまり人の声の遮断にとくに強くて、オフィスのざわめきや電車のなかの会話がすっと遠のく。音質はオーバーイヤーの物理的な優位がそのまま出る。音場が広い。トレブルが繊細で、低音の分離がきれいだ。家でレコードを聴くように、音楽そのものに沈んでいける感覚がある。僕はこの感覚が好きだ。だから良いものだと正直に思う。

ただ、良いものであることと、自分に必要なものであることは、別だ。

僕には苦い記憶がある。一時期、オーバーイヤーヘッドホンにすっかりハマっていた時期があった。家で使う分には最高だった。問題は、外に持ち出したときに全部出てきた。夏場、2時間も装着していると耳のまわりが蒸れてくる。首が疲れる。汗をかく。外そうとしてカバンにしまうのだけれど、折りたためないから、やたらと場所を取る。そうやって何日か持ち歩いて、ある日ふと気づいた。AirPods Proをポケットに放り込んだほうが、よっぽど快適じゃないか、と。

その学びの授業料は、お小遣いがゼロになることで払った。だから僕は、4月にAirPods Max 2を買って、7月に「やっぱりPro 3でよかったな」とつぶやく人の姿が、はっきり見える。それはかつての僕だからだ。

ここで冷静に数字を並べておきたい。AirPods Pro 3は39,800円。価格差はちょうど5万円ある。そのうえで、Pro 3のノイズキャンセリングは外部騒音をおよそ90%低減する。Max 2のノイキャンとほぼ同等だ。数字の見出しだけ追うと「初代1.5倍のMax 2が上」に見えるけれど、実際に耳に当てて差を体感できるのは、静かな部屋でひとり集中作業をする人くらいに限られる。通勤の電車で音楽を流す程度なら、Pro 3で過不足ない。

音質も、ここは正直にMax 2が勝つ領域だと認める。ただ多くのレビュアーが口をそろえて「Pro 3の音質はMax 2の99%まで迫っている」と言っている。残りの1%に5万円を払うのか、という問いになる。バッテリーも、Max 2の20時間は確かに長い。けれどPro 3はケース込みで30時間、本体だけでも8時間持つ。8時間ぶっ通しでイヤホンを使う日が、自分の生活に年に何度あるか。手を止めて数えてみてほしい。

そして防水。AirPods Pro 3はIP57で、汗にも小雨にも耐える。Max 2には防水がない。夏に持ち歩く道具として、ここはわりと効いてくる差だ。重さも、Pro 3は片耳5.7gで、ポケットに入れたことすら忘れる。Max 2の386gは、忘れさせてくれない。

5万円という金額で何ができるかも、置いておく。Pro 3とSony WH-1000XM6を両方買っても、Max 2との差は1万円ほど。Pro 3を買って、残りをApple Musicに回せば4年近く音楽が聴ける。お小遣い15,000円なら、半年分が消える計算だ。

競合も見ておきたい。Sony WH-1000XM6は59,400円。254gとMax 2より130g軽く、バッテリーは30時間と10時間長い。ノイキャンは業界最高水準で、しかも折りたためて、LDACという高音質コーデックまで使える。Max 2より3万円安い。同じ価格帯にはBose QC Ultra 2もあって、こちらも59,400円。オーバーイヤーが欲しいという話なら、Max 2より先にここを見たほうがいい。

ではAirPods Max 2が明確に勝つのはどこか。透過モードの自然さと、Apple製品同士のシームレスな連携。この2点だ。iPhoneからMacへ、何の操作もなく音が移っていく。外の音をスピーカーのように自然に取り込む透過モード。Apple製品で身のまわりを統一している人にとって、この体験はたしかに気持ちがいい。

買い時という意味では、僕は今すぐではないと思っている。4月1日に発売されたばかりで、値下がりの余地がまだない。そして何より、これから来る夏に、新品の386gを下ろすのは現実的にきつい。秋まで待っても何も困らないし、待てば整備済み品で1〜2万円安くなる可能性もある。点をつけるなら、買い時としては45点。待ち、というのが僕の今の評価だ。

それでも、という人もいる。自宅で長い時間、音楽に深く沈み込むのが好きな人。あの音場の広さは、Pro 3では届かない場所にある。外に持ち出さず、家専用と割り切れるなら、Max 2の音質は払った金額に見合う。Apple製品で統一していて、切り替えの滑らかさや透過モードの自然さに上乗せ分の価値を感じられる人にも、止める理由はない。

けれど、それ以外の大半の人には、僕はやっぱりPro 3で十分だと言う。もしくはSony XM6。ノイキャンはほぼ同等、音質は99%、防水が付いて、ポケットに収まって、半額以下。夏のあいだ持ち歩く現実を引き受けるのは、結局この軽さのほうだ。

僕はオーバーイヤーの音が好きだ。それは今でも変わらない。だからこそ言える。AirPods Max 2は素晴らしい製品だ。ただ、素晴らしい製品と、自分に必要な製品は、違う。

その違いを、僕はお小遣いがゼロになって覚えた。あなたには、5万円を払う前に思い出してもらえたらいい。

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